■緑色の風に乗って(2)

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■6月6日(木) 晴れ時々くもり 28474歩
 早々に寝てしまったため暗いうちに何度も目が覚め明け方近くになってようやく眠れたので不覚にも寝過ごした。窓の外は相当明るい。バタバタと撮影機材だけを持ってヨッピ橋に向かう。幸い,昨日あんなに痛かった足首も痛みが治まり今朝は頗る調子がいい。

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【振り返るとドローンの影を中心にブロッケンや白く大きな虹が見える】

 カメラザックを担いで外に出ると,周囲は願ってもない深い朝靄に包まれていた。これなら,朝靄の上空からの幻想的な光景が撮影できそうだ。ライブカメラで上空の様子を確認することはできないが,朝靄の所々薄くなっている場所から時々茜色に染まる雲や青空やモルゲンロートに染まる至仏山が見えた。急いでドローンを飛ばしたいと気持ちは焦るが,やはり電波の状態が良いヨッピ橋付近のベンチ付近まで急がなくては・・・。

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【上空ではすっかり青空が広がっていますが,この時,尾瀬ヶ原は深い朝靄の中でした。】

 この時期なら,イモリ池周辺から撮影すれば燧ヶ岳の山頂付近から太陽が昇るダイヤモンド燧ヶ岳が撮影できると期待していたが,辺り一面,濃い朝靄に覆われ,暫く晴れそうにないため諦めざるを得なかった。その分,空撮に集中,集中。少し高度を上げただけで,直ぐに朝靄の上に飛び出す。ほぼ快晴の空の下に広がる朝靄は尾瀬ヶ原全体をすっぽりと包み込んでいた。そしてその彼方には,朝日を受けた至仏山が赤く染まっていた。

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【徐々に薄くなってきた朝靄から太陽の光が零れます】

 しかし,太陽の光は中々湿原まで降りてこない。太陽が燧ヶ岳の山頂の高さまで高度を上げるまで撮影しながら待つしかない。最初に陽が当たったのは上田代。そこにドローンを向かわせ,高度を変えながら南から北へと平行移動していくと太陽が燧ヶ岳の真ん中から昇る姿が捉えられる。お目当てのダイヤモンド燧ヶ岳の撮影し,180度向きを変えると今度はドローンを中心とした白い虹が大きな弧を描いていた。幻想的な光景をじっくり撮影したが,湿原はまだ深い朝靄に包まれその姿を現さない。この日の朝靄はいつになく濃く,なかなか晴れる気配もない。今日は,朝弁当にしていなかったので小屋に戻らなくては・・・。ちょうどバッテリー1本分の撮影を終えたところで撮影を切り上げ小屋に戻る。

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【条件が整うとこのようなくっきりとした白虹が見れます】

 小屋に戻る途中,徐々に朝靄が晴れ,振り返ると大きくはっきりとした白い虹が架かった。すかさず手持ちのカメラとスマホで白虹を撮影する。この日は,尾瀬ヶ原全体が深い朝靄に包まれていたおかげで上田代,龍宮,見晴でもはっきりとした白い虹が見られたそうだ。今年の初めての尾瀬で白虹が見れて大満足で小屋に戻る。まだ食堂にはたくさんの宿泊客が食事をしていたけれど,大急ぎで食事を済ませ,チェックアウトまでの時間を利用して,東電小屋横のベンチからドローンを飛ばす。東電小屋は少し高台にあるから尾瀬ヶ原を狙うには都合が良いのだ。既に朝靄はほとんど消えかかっていて,一番良い時間帯は過ぎていてちょっと悔いが残る。撮影に集中したいなら,朝弁当にするべきだと改めて思った。

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【朝靄越しに見る景鶴山】

 撮影を済ませてから出発準備を整え,いろいろと御世話になった支配人さんに御礼を言って小屋を後にする。脚の状態は昨日に比べたらかなり良くなっていたので,見晴経由で帰ることにした。それには,もう一つ理由がある。赤田代分岐付近から平滑の滝・三条の滝の二つの滝を空撮しようと考えたためだ。この2つの滝は,電波の安定性が増し,望遠カメラの付いた新ドローンにはもってこいの被写体なのだ。

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【芽吹き始めたヤマドリゼンマイ】

 温泉小屋を飛び越えると直ぐに見えてくるのが平滑の滝,そして,そのちょっと先にあるのが三条の滝。どうしても電波状態の良くない場所にあるので,かなり上空からではあるが,目的の動画も撮ることができたのは大きな収穫であった。

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【上空から見る平滑の滝】

 見晴で小休止してから龍宮に向かう。この見晴・龍宮間は尾瀬のメインの木道であるにも拘わらず,一番木道の整備が遅れているように感じる。利用者も多く木道が老朽化するのも早いのだと思うが,痛み具合が尾瀬の木道の中でも相当悪い部類に属すると思う。歩荷さんたちが声を掛け合って木道を整備しようとしたが,十分な資金が集まらなかったようだ。皇室関係者が誰か尾瀬に来ることになれば,あっという間に整備されるはずなんだけどな・・・

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【上空からの三条の滝】

 龍宮小屋に立ち寄って久しぶりに小屋主さんと話をしたかったが,小屋は清掃中らしく鍵がかかっていたため,龍宮十字路のベンチで一服後,至仏山荘で昼食を済ませ,鳩待峠に向かった。それほど速いペースでは歩けなかったが,この日は歩けないほどの痛みが出ることはなかった。次の尾瀬を考える余裕が出来たのは,今回の尾瀬の一番の収穫だった。
*空撮にあたっては,DIPS2.0での各種登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【ちょうど咲き始めたズミと背景に至仏山】

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