■6月20日(木) 晴れのちくもり 24611歩
夜中に起き,トイレに行くついでに外を眺めると相変わらず空には一片の雲もなく澄んだ空にまぁるい月が煌々と輝いていた。明日,朝靄が出てくれたらいいのだが・・・。4時前に目が覚めたので,撮影機材を持って外に出ると,いつの間にか雲が多くなっていた。尾瀬沼の水面から一部で朝靄が立ち,幻想的な光景を見せていたが,大江湿原や尾瀬沼を覆い尽くすような朝靄はほとんどなかった。
【東側になった雲も徐々にとれ雲間から漏れた光が燧ヶ岳山頂を照らし出した】
朝の湿原をカメラを持ってゆっくりと散策すると,昨日の暖かさで花数を増したレンゲツツジや少しばかりのワタスゲが朝露に濡れて眠たそうに首を傾げていた。しっとりとした空気に包まれ,ぼんやりしているとカッコウの声が湿原に響く。穏やかなそして贅沢な朝の時間である。時間と共に雲も少なくなり,燧ヶ岳の山腹を朝陽が照らし出し,大江湿原にも日差しが射し込むようになる。
【朝靄のない朝だが朝露に濡れた湿原が朝日を受けて僅かに輝く】
このしっとりとした朝の雰囲気を上空から俯瞰したくて空撮を始めた。久しぶりに上空から見る尾瀬沼の朝。彼方に見える至仏山も朝の光を浴びていたが,朝靄もほとんどなく何か物足りない感じがした。風もなく静かな時間が流れていた。端境期の平日と言うこともあり,大江湿原を散策している人もなく,燧ヶ岳を目指す登山者が足早に湿原を横切っていくだけである。
【朝靄を纏ったズミの花】
朝食の時間になったので小屋に戻る。撮影する際は朝弁当というのが鉄則なのだが,朝の暖かい朝食の魅力に負け,今朝も普通に朝食を頼んでしまった。(^^ゞ 温かい朝食で一息ついた後,火の入った薪ストーブがパチパチと音を立てる談話室で短い時間寛いでから出発準備を整えた。このまま帰るのも勿体ないので,不必要な物を小屋に預け,尾瀬沼を1周することにした。始まったばかりのヤマスタもやらなくては・・・。
【今年のヤマドリゼンマイは霜に痛めつけられる事もなく順調に育った】
燧ヶ岳を目指す登山者はとうに出発してしまい,沼山峠から入山してくる観光客もそれほど多くない。僅かに残った宿泊客が長蔵小屋の前で記念撮影を済ませ,三々五々旅立っていく。長蔵小屋いつもの朝の光景が繰り返されていた。小屋の前の清水で口を潤し,ボトル一杯に冷たい水を補充して,のんびりと沼の周りの散策に出かけた。
【熱くなってくるとギンリョウソウの季節。あちこちで出てきました・・・】
涼しい森の中では,ゴゼンタチバナがたくさん咲いていたほか,ギンリョウソウの芽吹きも始まった。ニッコウキスゲの時期にはまだ少し早いようで花芽はあまり見られなかったが,気の早いキスゲが数輪花を咲かせていた。ただ,今年はコバイケイソウが非常に多く見られた。この花が多い年はキスゲが不作なのだと言うが,今年は果たして・・・。
【初夏の光溢れる尾瀬沼・沼尻】
最近,温暖化の影響で尾瀬の自然が変わりつつあるのを強く実感しているが,それはどれも良くない方への変化で,尾瀬の自然が少しずつ,確実に失われ,それにともなって,尾瀬の魅力も損なわれていくようでとても寂しく感じる。更に,渋沢温泉小屋,富士見小屋,見晴休憩所など廃業する山小屋等の増加,なかなか更新されず朽ち果てていく木道の割合が増えるのを見るにつけ,尾瀬に関わる人たちの熱い思いもまた失われつつあるように感じてしまう。昔の尾瀬は,まぶしい光が満ちあふれ,もっと活気があったように思う。そんなふうに考えるのは,今はもうなくなったものを求めて遠い昔を懐かしむ単なる懐古主義なのだろうか。
【尾瀬沼・南岸を空撮してみました】
そんなことを考えながらゆるゆると歩いているといつの間にか沼尻に出た。周囲を見渡すと尾瀬沼の水位がかなり下がっていて,沼尻休憩所周辺の土がむき出しになっている場所が目立った。雪どけ水も少なかった上に降雨も少なかったためだろう。梅雨になったら元の水位に戻るのだろうか? ここから治右衛門池,タソガレ田代など未踏の地の空撮を行った。
【水不足でやや干上がった沼尻】
沼尻休憩所でゆっくりと昼食をとり,来た道を戻ることにした。ピーカンだった朝に比べてこの頃は徐々に雲が増え,写真を撮るには好都合だったのであちこちで撮影しながらゆっくりと沼山峠に戻った。最後に久しぶりに檜枝岐村の「裁ちそば まる家」に立ち寄りそばとハットウを食するのを忘れずに・・・。
*空撮にあたっては,DIPS2.0での各種登録,関係機関への連絡・調整済みです。
【沼尻湿原と尾瀬沼】
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