■秋風に誘われて・・・(2)

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■10月15日(火) 曇りのち晴れ 26345歩
 長蔵小屋は宿泊料金を少しでも安く上げようと相部屋にしたが,カーテンで仕切られた昔ながらの部屋で,ある程度プライバシーが確保できるのは助かる。同室の人に余り気を遣わずぐっすり休む事ができた。深夜に一度,外を確認するが,雲に覆われて星もほとんど見えない。今朝はゆっくり朝食をとるパター^ンかなと思いつつ再びの眠りにつく。5時頃に目が覚めた。食事の時間までまだ時間があるので,天候は相変わらず好転しないし,朝靄も全く出ていないけれど,撮影機材を準備して元長蔵小屋横のベンチに向かう。

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【尾瀬沼に浮かぶ水草もすっかり秋色に染まっています】

 既に2名ほどが三脚を立てていた。一人は巻島さんだった。星の撮影をしたくて早起きをしてそのまま戻っていないということだった。日の出が近くなるにつれ,大江湿原の上空を行き交う雲や燧ヶ岳の山頂を隠し続ける雲が僅かに茜色に染まった。時間を確認すると,既に朝食時間となっていたので,適当な時間で撮影を切り上げ小屋に戻った。

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【水面に浮かぶ水草が強い日差しを受けて輝きます】

 それほど遅れることなく,朝食の席に着き温かい食事にありついた。冷えた朝弁当のおにぎりとは比べようもない。撮影するものもそれほどあるわけでもないいし,何より天候がパッとしない。予報では日中は晴れるはずだが,ひょっとしたらこのままぐずついたままかも・・・。帰ろうかなと言う気持ちもまた芽生えたが,間もなく尾瀬のシーズンも終わるし,山小屋に泊まるのも今年最後なので尾瀬ヶ原に向かうことにした。当初は御池・燧裏林道経由で行こうと思っていたが,天候も芳しくなかったので,真っ直ぐ段小屋坂経由で行くことにした。荷物をまとめ,出発前に巻島さんに挨拶しようと思ったが,見つからなかったので先を急いだ。

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【沼尻から見る光景を少し浮かして尾瀬沼の上から】

 北岸道をゆっくりと歩ていると徐々に雲間から光が射し込み,黄葉した木々にスポットライトを当て始める。このまま天候が回復してくれたらと思いながら歩いていると,願いが通じたのか沼尻に着く頃には,低い雲はすっかり消え,秋の高く青い空が広がっていた。すっかり秋らしい天候になったので,沼尻休憩所のテラスからドローンを飛び立たせ空撮した。沼に蔓延る水草の一部が黄葉したり,朝の光を反射して綺麗だった。

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【尾瀬沼の紅葉は派手さはないが,僅かな紅葉が水面に映って綺麗です】

 空撮を終え,秋の日差しに照らされる黄葉が美しい尾瀬沼を後にして尾瀬ヶ原に向かう。白砂湿原を越えると樹林帯の中を歩くので,まだ暑い日差しを避けられるし,何より透過光越しの美しい紅葉や黄葉が次々と目前に現れ,飽きることもなく見晴に着いた。高度が低い分,尾瀬沼よりも尾瀬ヶ原の紅葉の方が遅れているようだが,尾瀬ヶ原の周辺は,赤く色付く広葉樹が多いので,尾瀬沼周辺よりも紅葉は華やかに感じる。さらに,猛暑の影響も加わって,紅葉が遅れているのは確かで,この週末辺りに見頃を迎える感じだ。とすると例年よりも10日も遅い紅葉と言うことになる。

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【尾瀬ヶ原もすっかり周辺の山々の紅葉が始まっていました】

 見晴では,既に原の小屋,第二長蔵小屋,尾瀬小屋の三つの山小屋が既に営業を終え,冬囲いを始めていた。尾瀬小屋の生ビールとスパイシーなカレーを楽しみに歩いてきたのでちょっとガッカリ。仕方なく檜枝岐小屋のカレーでお昼にした。昼食後は,山小屋にチェックインするのには早すぎる時間なので,ヤマスタのコンプリートを目指して,東電小屋経由で龍宮小屋を向かうことにした。

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【三条の滝は展望台工事のために早々に閉鎖になっていたので上空から】

 途中で工事中で立ち入り禁止となっている三条の滝の空撮を行い,東電小屋に着く頃には,低い雲が青い空よりも優勢となってしまった。しかし,ベンチで休んでいると,その雲間からいい感じで景鶴山やヨシッポリ田代を取り囲む山々にスポットライトが落ちる絶好の撮影チャンスとなった。撮影にはピーカンよりも,寧ろ,個性的な雲やスポットライトが飛んだり跳ねたりしてくれた方がありがたい。

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【湿原内にもススキがたくさん揺れ,尾瀬の秋を演出しています】

 暫くじっくりと撮影し,龍宮小屋に向かった。雲もすっかり分厚くなり,今日も彗星の撮影は無理そうだ・・・。撮影するものも少なくなったので,早めに小屋にチェックインした。約4か月ぶりの尾瀬。そして,今年初めての龍宮小屋宿泊となってしまった。受付を済ませ,今年最初で最後の龍宮コーヒーをしみじみといただいた。今日はすっかり雲に覆われ夕焼けもないだろうし,明日は朝から「雨時々曇りの予報・・・」となれば,朝焼けもないだろうし,撮影に時間をとられることもない。今年のラスト尾瀬をじっくり楽しもうと腹をくくった。

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【雲が多くなり,あちこちにスポットライトが落ちる天候になった】

 一年ぶりとなる小屋主さんとゆっくり話をして,熱々の風呂に入って今日の疲れを癒やし,夕焼けを気にして慌ただしくご飯を掻き込むこともなく,のんびり夕食をとった。これぞ贅沢な尾瀬の山小屋満喫ライフ・・・ あとは寝るしかない。明日もこののんびりとした贅沢な時間の使い方は続く・・・ と思っていた。
*空撮にあたっては,DIPS2.0での各種登録,関係機関への連絡・調整済みです。

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【尾瀬の周辺の樹林帯もそろそろ見頃を迎えそうです】

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