■錦秋の尾瀬を歩く(1)

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■10月17日(金) 快晴 21905歩

 昨年は3回,そして,今年は未だにゼロ。尾瀬に向かう回数は年々減り,悲しいかな所謂「尾瀬病」は自然治癒に向かいつつあるようだ。尾瀬の情報が気になって,天気予報とにらめっこをして急いで荷物を詰め込んでは,深夜に家を飛び出していた頃が懐かしい。寄る年波と共に体のあちこちのメンテナンスが必要になり,その為に残雪豊富な今年の尾瀬を見送ったのが始まりで,その後もなかなかタイミングが合わず,尾瀬のことは頭の片隅に追いやられ,時間ばかりがどんどん過ぎた。
 記録的な猛暑は今年も健在,というか年々厳しさを増し,そこで生きる全ての動植物に大きな影響を与えている。今年もその余韻が残り,尾瀬の紅葉の見頃は後ろにずれ込んだ。今までは,10月10日の体育の日前後が日光や尾瀬の紅葉の見頃というのが通例だったが,今はもう通用しない。それに合わせ,3連休後の入山を計画した。
 この調子だと,年間尾瀬入山日数ゼロという記録を作りかねないと気を揉んでいたが,なんとか山小屋の営業中に,今年初の尾瀬入山が実現できそうだ。実は,一週間ほど前に,尾瀬入山を目論んだものの悪天のため,尾瀬に立ち寄ることなく鎌田の道の駅で写真集の納品を済ませて帰宅することがあったので,今回は,どんな悪天でも尾瀬の紅葉を楽しむつもりで向かおうと強く心に決めていた。

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【透過光越しに見るもみじの紅葉は特に鮮やかで綺麗です】

 尾瀬周辺の紅葉狩りの渋滞を懸念して早めに家を出たからなのか,それほど多くの車を見ることもなく戸倉に着いた。タクシー乗り場でもほとんど待つこともなく,鳩待峠に向かう。車窓から見る紅葉は高度を上げるにつれ徐々に鮮やかになる。そして,久しぶりの鳩待峠・・・。工事もすっかり終わり,「鳩待峠休憩所」は「はとまちベース Cafe & Shop」へ,「鳩待山荘」は「LUCY尾瀬鳩待」へ,経営者も東京パワーテクノロジーから星野リゾートへと変わり,綺麗で立派な建物に変わっていた。どんなふうに変わったのだろうと外から覗いてはみたものの,はとまちベースの営業は9時からということで扉は閉まったままであった。以前は朝早くから登山者を受け入れていたのに・・・。「お気軽にお立ち寄りください」と言いながら,この点だけでも以前に比べたら登山者には全く優しくない施設に変貌してしまったようだ。

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【ブナの黄葉を背景にそれぞれの樹木が色とりどりに紅葉していて綺麗でした】

 気を取り直して久しぶりの尾瀬ヶ原に向かう。周囲の樹林の紅葉は直前まで降っていた雨に洗われて鮮やかではあるが,少し見頃を過ぎた感は否めない。尾瀬ヶ原に向かって少しづつ高度を下げる形になるので,紅葉は徐々に鮮やかさが増してくる。テンマ沢付近辺りまで降りてくると,ブナの黄葉やモミジなどの赤が青い空を背景に眩しい光に照らされ輝いていた。途中,直前まで降っていた雨に濡れた木道で転倒し,左指を捻挫してしまったが大事には至らず無事山の鼻に到着した。平日だからなのか,紅葉の時期が遅れているからなのか分からないがそれほど混雑はしていなかった。

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【温暖化の影響で紅葉の見頃は年々後ろにずれ,ちょうど見頃を迎えていました】

 時間も早かったので,トイレを済ませ,研究見本園に向かった。湿原ではボランティアの人たちが多数集まり,シカ柵の撤去をしていた。暫く来ないうちに,もう,今年のシーズンが終わるのだなぁと寂しい気持ちになった。湿原や拠水林のダケカンバの黄葉やヤマウルシ・ナナカマド等の紅葉は,見頃を少しばかり過ぎてはいたものの周囲をぐるりと取り囲む山々は,緑から黄色,そして赤に変わるグラデーションがとても鮮やかで,ちょうど見頃を迎えていた。

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【長沢沿いの散歩道。日差しが降り注ぎ黄葉のトンネルが鮮やかです】

 上田代の池塘前のベンチに荷物を下ろし,そんな紅葉を見ながら昼食にした。昼食後はいつもの空撮。天候や紅葉の時期がぴったりと重なることは意外にも希で,そんな好条件の時に上空から撮影した記憶がない・・・。好条件過ぎて,雲が一つもないというのが唯一贅沢な悩みだ。やや変化に乏しいものの上空から見る紅葉もまた素晴らしかった。緑や黄色など色鮮やかな木々のモコモコがあちこちに散らばり,池塘は真っ青な空を青く,眩しく映し出し,美しい尾瀬の秋を力強く演出していた。

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【湿原内のススキがいかにも晩秋の尾瀬の雰囲気を醸し出しています】

 日差しも強すぎることもなく,心地良い風に吹かれながら歩くのはなんとも爽快だ。ベンチで休み休みゆっくりと歩き,最後は龍宮十字路のベンチで荷物を下ろし,2度目の空撮を行ったあとは長沢沿いの紅葉を見に行った。ここもちょうど見頃を迎え,モミジの紅葉やブナなどの黄葉で鮮やかな散歩道が,午後の日差しに照らされて眩しく輝いていた。

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【午後の日差しに照らされる盛秋の尾瀬ヶ原。】

 撮影後,早めに小屋にチェックインして荷物を置いてから見晴まで散歩に行こうとも思っていたが,部屋に入ったら億劫になって行くのをやめて部屋でゆっくりすることにした。日が傾き始めた頃,夕暮れの秋の尾瀬ヶ原を撮影したくて必要な機材だけを持って十字路へ。相変わらず雲一つない天候ではあるが,ただでさえ真っ赤な紅葉の山々が,深紅の夕陽に照らされて,より鮮やかに染められて赤く赤く燃えていた。長沢に足を伸ばすと,傾いた夕陽に照らされて揺れる湿原のススキが,去りゆくシーズンを象徴しているようで寂しげだった。

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【紅葉して既に真っ赤な尾瀬を深紅の夕陽が更に赤く染め上げます】

 小屋に戻り,夕食前に風呂に入って出てくる頃にはちょうど夕食の時間になっていた。久しぶりに二万歩も歩いて空腹になっていたせいか,こんな早い時間にも拘わらずしっかり完食した。一年ぶりにゆっくり小屋主さんと談笑して部屋に戻った。鳩待山荘も経営が変わったし,慣れ親しんだ長蔵小屋も経営の移管を進めているようだし,特にコロナ以降,尾瀬の山小屋の経営もいろいろと苦労は絶えないようである。朝も早かったし,久しぶりに歩き疲れたこともあり,いつもよりも早めに休んだ。

*空撮にあたっては,DIPS2.0での各種登録,関係機関への連絡・調整済みです。

この記事へのコメント

  • nousagi

    久しぶりのUP、拝見しました。
    ブナの紅葉、いいですね。
    草紅葉も。
    毎年、何回も行かれていたんですね。
    私は、もう数年行っていません。
    うかうかとしていると、尾瀬の秋はあっという間に冬景色に代わりますね。
    2025年10月28日 19:55
  • Aqua

    >nousagiさん
    いろいろあって,今年はやっと初めて尾瀬に行けました。
    ここ数年,回数がちょっと減っていますが多い時には年間10回ぐらい行くこともありました。
    昨日雪が降り,今朝も大霜が降りたとかで急速に冬支度が進んでいるようです。
    2025年10月31日 01:37
  • jetstream

    NICE!
    2025年11月07日 23:49